エグゼクティブサマリー 2022
はじめに 20 年間にわたるカカオセクターの持続可能性についての議論の末、”なぜ私たちはこれらの問 題をいまだに解決していないのか?”という疑問が湧く。確かに、カカオバロメーターでは、ま るで 2 年ごとに同じ問題について書いているかのように感じることがある。実際には、長年に わたってさらなる課題が追加されている。 環境保護をめぐっては、相互に関連するいくつかの課題が浮き彫りになっている。森林破壊と 生物多様性の喪失はカカオの生産が引き金であり、気候変動はカカオの生産に影響を与え、ま たカカオが引き起こす森林破壊によって悪化している。農薬の使用は環境破壊を引き起こすと 同時に、農薬を使用する側にとっても危害をもたらす。 西アフリカのカカオ生産地では児童労働が引き続き課題となっており、子どもたちは年齢に適 していない危険で有害な労働に従事している。ジェンダーの不平等は、権利の主体であり変革 の担い手でもある女性にとって障壁を生む。 カカオにまつわる問題を木で表した場合、環境保護と人権は 2 つの太い枝となっており、その 根幹にはどちらも農家の貧困がある。農家の貧困は現在、生活費の危機的上昇によって悪化し ている。
ここ数年、生活所得という概念はカカオセクターの重要な目標となっているが、これまでのと ころ企業の中核的な事業活動に変化はみられない。コートジボワールとガーナの政府間協力に よる市場価格の引き上げは重要なステップだが、今のところカカオの農家出荷価格は十分な報 酬水準とはいえない。 持続可能性に関する意思決定は、カカオ生産者の現実からかけ離れていることがあまりにも多 い。権力者たちによって意思決定がなされ、それらの内容は権力者の利益に沿っている。その ため、今のところ、数十年にわたる農家出荷価格の引き上げの要求には応えていない。その代 わりに、収穫量の増加や生産活動の多角化など、農家がやり方を変えることに焦点を当てたア プローチが追求されてきた。 !!”#$%&'(#)*+ 本報告書の調査によると、農家の貧困を救済するためにこれまで好まれてきたアプローチでは、 所得格差を埋めることはできないことが示されている。収穫量の増加は必ずしも実質的な所得 の増加には繋がらず、農家のリスクを増やすことになる。農家出荷価格の大幅な上昇なしには、 持続可能なカカオセクターの実現は夢物語となる。 カカオ農家の世帯が生計を立て、自然が守られ繁栄し、すべての権利(子どもや女性、その他 の社会的に脆弱な立場にある人々の権利を含む)が保護される、真の意味での持続可能なカカ オになるためには、真の変革が必要である。真の変革とは、根本的な変化である。 その意味で、カカオ消費国におけるサプライチェーン法の整備は非常に前向きな進展だが、各 国が同程度の野心を持てるかと、サプライチェーン法がどのように実施されるかによって、望 ましい結果が得られるかどうかが決まるだろう。 カカオセクターに必要な変革は、単により良い農法によってもたらされるのではなく、その変 革を可能にする制度環境に目を向けることが重要なアプローチとなる。政策や購買慣行におい て、根本的な変更と改善が必要である。これらが整ってはじめて農家を繁栄させるためのビジ ネスが成立する。
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